中間所得層の獲得へ一手
花王が出遅れていた中国戦略に本腰を入れ始めた。
今年1月、ベビー用紙おむつで同社初となる中間所得層向け製品「メリーズ瞬爽透気」を発売した。昨年10月に安徽省で稼働したおむつで初の中国工場で生産している。標準Mサイズで1枚当たり約1.6元(約24円)の価格は、日本から輸出販売してきた従来製品に比べて半値近い。
トイレタリーで国内最大手の花王。売上高1兆2000億円のうち7割超は国内で稼いでいる。海外売上高比率を27%から2020年に50%以上まで引き上げる目標を掲げる。特に、約300億円しかない中国事業をいかに伸ばすかが大きな課題となっている。
これまで中国では日本基準の高価格商品を中心に販売してきたが、ボリューム層である中間所得層の開拓に乗り出す。その第一弾となるのが紙おむつメリーズである。
調査会社によると、12年の中国の紙おむつ市場は約1400億円まで膨らんだ。これは日本に匹敵する規模。さらに、5年で約5倍に成長するとみられている。トイレタリー製品の中でもとりわけ安心・安全が重視されるためか、“反日”に強いのも魅力だ。12年秋の反日デモのときでも、日系企業のベビー用品はほとんど影響を受けなかった。
メリーズは国内市場で約25%のシェアを持つトップブランドで、衣料用洗剤「アタック」、生理用品「ロリエ」と並ぶ花王の看板商品の一つ。だが、09年から販売する中国では、上海などの高所得層向けのみでシェアは3%しかない。
ライバルの元提携先と組む
シェア30%超でトップの米P&G、20%弱で2位群につけるユニ・チャームに追いつくために、入念な準備をした。数千件に及ぶ現地家庭の訪問・調査を行い、新製品には「通気性」を向上させる新技術を採用した。水分の吸収用のポリマーとパルプの配置を工夫し、お尻のべたつきを軽減。「この点は高価な従来品より優れたものに仕上げている」とメリーズの企画・販売を担当する藤原正輝ブランドマネジャーは語る。それでいて、現地での原料調達や生産によって販売価格を抑えた。
販売面では、現地で日用品製造・卸を行う上海家化と業務提携した。今後は上海家化を通じて中国全土の2.5万店のベビー用品店に展開する。国内では小売りと直接取引を行う同社だが、海外では現地企業と提携することも少なくない。異例なのは上海家化が5年前までユニ・チャームが提携していた相手だということ。なりふり構わず、同社の成功をなぞる戦略だ。
ただし、「上海家化は中国内陸部での納入シェアが低く、カバーできる範囲が狭い」(業界アナリスト)との指摘もある。ユニ・チャームは上海家化との提携解消について「その段階ではなくなったから」と説明する。その後、同社は内陸部などに強みを持つ現地卸を利用してシェアを向上させており、上海家化との提携効果は未知数といえる。
今回の瞬爽透気の開発から生産、発売まで、花王は約10年を費やした。ユニ・チャームは調査から商品の発売までの期間が1~3年。花王のスピード感のなさは不安要因として残る。生産面でも初の紙おむつ工場を立ち上げたばかりの花王に対して、ユニ・チャームは13年末に中国5拠点目となる内陸江蘇省の工場が稼働する。出遅れを取り戻すのは容易でない。
今後、衣料用洗剤や生理用品でも中間層向け展開を強める。花王の澤田道隆社長は「明らかに最後発。すぐにシェアを上げられるとは思っていない」と慎重だが、勝負をかける思い切りも必要だ。
リソース:東洋経済
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