産科医との関係作りで“安心”を訴求
ベビー・育児用品大手のピジョンが、中国で急速な成長を遂げている。会社が9月初旬に発表した今2013年2~7月期(上期)の決算では中国での売上高が61億円となり、現地通貨ベースで前年同期比53%という急成長を遂げた。これが牽引し、海外事業全体の売上高は120億円を突破。国内のベビー・育児関連用品の売上高(119億円)を、上期終了時点で初めて逆転した。ピジョンは同時に、通期の連結業績予想の上方修正も発表している。
会社が発表した上期決算は、売上高312億円(前年同期比9.8%増)、営業利益32.5億円(同54.5%増)というもの。少子化による国内の不振をものともせず、当初計画より売上高が11億円、営業利益が10億円上振れる着地となった。好調の要因について、会社は「8割方が中国」と説明している。
ピジョンが中国に進出したのは約10年前。当初から単なる“生産拠点”ではなく“マーケット”ととらえ開拓に着手したという。主力のほ乳瓶をはじめ、育児小物、トイレタリーなど、現在展開する製品は500にのぼる。メインターゲットは富裕層。主に上海、北京など沿岸部で販売を行ってきたが、11年1月に中国第二工場が稼働したことが手伝い、内陸部での業容拡大も加速している。その結果、中国の育児関連品市場シェアはわずか10年で約6割に達し、圧倒的なトップメーカーとなっている。
さらにピジョンの中国事業は、利益面の貢献度も高い。今上期の業績では、国内育児関連用品のセグメント利益が17億円(前年同期比1.1%増)だったのに対し、海外事業は26億円(同71%増)。やはり中国の成長によるところが大きく、今上期は特に第二工場の稼働率が上がったこと、日本からの輸出製品の内製化が進んだことによる効果が顕著に出た。
一方で進出当初からの独自の“認知拡大策”も、この成長に大きな役割を果たしている。効率的に利益を稼ぎ出すためにピジョンが目をつけたのが、現地の産科医だった。同社は育児雑誌などへの広告出稿とともに、病院での商品展示会や医師への営業を積極的に実施している。また09年からは中国国家衛生局と共同プロジェクトを組み、全国の主要病院に「母乳育児相談室」を設置。育児に関する情報提供や啓発活動を通じて、母乳パッドなどまだ現地に根付いていない製品群の浸透を図っている。
「子どもの成長に合わせ、育児用品の消費者は毎年のように変わってしまう。が、裏返せば消費者である母親はほとんどが育児初心者」(ピジョン)。産科医との提携は、毎年入れ替わる消費者に継続的にアピールできるだけでなく、医師が推奨することで初心者へ“安心・安全”を訴求できる方法なのだ。
懸念される反日デモの影響も「大きな心配はしていない」(ピジョン)。同社製品を扱う「ピジョンコーナー」の多くは現地資本の流通内に設置されており、日系流通各社のような館の被害は免れている。加えて育児関連用品はわが子の成長にかかわるだけに、“安心・安全”が最優先される傾向にある。ピジョンが日本メーカーであるという認知は高いものの、攻撃や不買の対象にはなりにくい。
上期売り上げ、利益の上振れ着地を受け、会社は通期売上高を649億円(前年同期比9.7%増)、営業利益62億円(同22.9%増)と、売上高を6億円、営業利益を5.5億円増額した。国内の育児関連用品事業の下期売上高見込みを4.5億円減額するなど、修正後の見積もりにはやや保守的な部分もある。ただ、費用面では販売促進関連の費用を当初計画より積み増す可能性も示唆している。
リソース:東洋経済
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