[北京 11日 ロイター] 中国のインフレが2月に高まったことを受け、同国の景気支援に向けた政策は困難な課題に直面している。9日発表された2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比3.2%と10カ月ぶりの高水準となった。1月の同2%から上昇率が加速した要因は食料コストの6%上昇だ。
大幅な物価上昇は、2012年に過去10年以上で最も低い成長率を記録した中国経済の安定化に注力する政府の方針を脅かす可能性がある。
しかし時期尚早にインフレ抑制に動けば、第4・四半期にようやく上向き始めた成長を脅かすことになる。中国の次期指導部も景気回復のこれほど早い段階にこのようなジレンマに直面することは望んでいなかっただろう。
中国人民大学財政金融学院の趙錫軍副所長は「今年は優先課題が3つあると考えている」と述べ、1つ目は経済成長の安定化でそれほど大きな問題ではないと指摘。2つ目は物価の安定で、ある程度の上昇圧力がすでに見られているようだとの見方を示した。
趙氏は3つ目の優先課題は帳簿外のウェルスマネジメント商品など隠された債務がもたらすリスクの低減だと指摘した。
中国人民銀行(中央銀行)は政策の焦点を経済成長からインフレ抑制にシフトさせつつあることをすで示唆している。人民銀行は2月に公表した第4・四半期の政策報告の中で、中国は優先課題としてインフレを抑制する必要があると指摘。前回の報告で示した景気支援を優先する方針を転換した。
<政策のジレンマ>
中国の食肉価格の上昇圧力はインフレ抑制への課題だけでなく、輸出主導型から消費主導型の経済へとシフトする上での課題も浮き彫りにしている。
食料価格は通常、旧正月(今年は2月)前に上昇するが、食肉、特に牛肉と子羊肉の価格はそれ以降も高止まりしている。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクス(ニューヨーク)の中国担当チーフエコノミスト、カール・ウェインバーグ氏は、顧客向けノートの中で「食料価格の上昇加速は、経済の他の物品・サービス分野で支出の伸びが鈍化していることを意味する」と指摘している。
ロイターが標準的な小売価格を比較したところによると、北京市の牛肉の小売価格は米ボストン郊外のスーパーマーケットを上回る。また、中国の主食である豚肉は米国の価格を1キロ当たり50セント程度下回る水準。
中国の平均所得は米国の約10分の1であり、食料価格高は中国の消費力を直撃している。
都市化が進み、農地や農業労働力が失われ、中国の都市部は大量の人口が流れ込むことで拡大している。さらに土地の劣化によって放牧が制限され、食料生産コストの上昇につながっている。
中国農業科学院の農業経済研究所で畜牛のトレンドを調査しているWang
Jimin氏は「経済が発展すればするほど、子牛を育てるのはより困難になる」と指摘。
「短期的には輸入が増えない限り食肉価格の下落は見込めない」との見方を示した。
<インフレ期待>
米農務省の概算によると、中国の牛肉生産は今年1%未満のペースで増加する可能性があるが、2008年以降毎年減少している。
北京の鶏肉業者、Yang
Shaohui氏は「最大で数カ月の鶏とは異なり、畜牛は育てるのには少なくとも1年かかる。鶏肉生産者はより早く市場に対応できる」と語った。同氏の鶏肉は近くの商店で牛肉価格の約3分の1で売られている。
飼料コストの上昇によって豚肉の価格も短期的に上昇する見通しで、第3・四半期までに全般的なインフレを押し上げるとみられる。
食料価格の上昇はインフレ期待を招き、全般的なインフレの高まりにつながる恐れがあり、人民銀行は物価圧力の抑制に向けて金融政策を調整する可能性がある。
しかし、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(香港)の中国担当チーフエコノミスト、Ting
Lu氏は、政策当局者は先制措置を講じたくなる誘惑に耐える必要があると指摘する。
同氏は顧客向けノートの中で「政策当局者は今年の後半に景気回復に伴うインフレを懸念すべきだが、現時点で大幅な金融引き締めを予測するのは時期尚早だ」との見方を示した。
(Lucy Hornby記者;翻訳 佐藤久仁子;編集 佐々木美和)
リソース:ロイター
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