省庁再編、歩みは遅く
【北京=大越匡洋】中国政府が10日公表した国務院(政府)の機構改革案では、長年の懸案となっていた鉄道省の解体を明記した。鉄道建設など同省の現業部門を切り離し、新たな国有企業として再出発させる内容だ。習近平指導部は「汚職の温床」と世論に批判される同省にメスを入れて改革姿勢を強調した形だが、現在27ある省庁は2つ減るだけ。行政改革の歩みは遅い。
鉄道省は鉄道政策を立案する行政機能と、鉄道建設などを担う現業部門を併せ持つ。自前の債券発行で賄う投資は2012年で総額6千億元(約9兆円)超。巨額の予算と権限が集中し、汚職を生みやすい。11年の高速鉄道事故でずさんな安全管理も露呈し、世論の批判は強まっていた。
改革案では、鉄道建設や旅客輸送など現業部門を国有企業「中国鉄道総公司」として行政から分離。安全管理など行政機能は「国家鉄道局」に再編し、航空、道路などを所管する交通運輸省の管理下に置くという。
前回08年の機構改革でも鉄道省解体は水面下で検討されたが、同省の強い抵抗で実現しなかった。5年越しの「宿題」に手を着けた格好で、北京市内の鉄道省前では10日、看板の前で記念撮影に興じる市民もいた。
改革姿勢を印象付ける習指導部の狙いは当たったようにみえる。だが、改革案全体をながめると、衛生部門と人口管理部門の統合など「別々だったことが不思議な組織をくっつけただけ」(共産党筋)の項目も多い。08年の改革で1つ減らした省庁の数は今回も2つ減るだけで、行政コストの削減効果は不透明だ。
実施時期についても、14日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での「採択後に時期を示す」(馬凱国務委員)というのみ。現場作業員など200万人の職員を抱える鉄道省の解体には1年以上かかるとの見方が多い。
盛光祖鉄道相は10日、中国メディアの取材に「人員削減はしない」と言い切った。行政の見かけのスリム化にとどまらず、実際に経済効率をいかに上げていくか。その道筋はいまだ見えない。
リソース:日本経済新聞
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