尖閣問題・大気汚染に不安
中国の日本人学校の採用内定を得て、今春赴任予定だった教員が、内定を辞退するケースが相次いでいる。沖縄県・尖閣諸島を巡る対日感情の悪化や大気汚染に不安を感じる人が多く、学校側が日本で募集した教員のうち、辞退者は3分の1に上った。予定数を確保できなかった学校は、教員が教科を掛け持ちするなど対策に追われた。
日本人学校の教員は文部科学省の派遣が6~8割程度を占め、残りは各校が独自に採用する。ただ、アジアなどでは各校が単独で採用活動するのは難しく、主に海外子女教育振興財団(東京)を通じて募集している。財団を通じた採用で、内定者は赴任地を選べない。
財団は1月下旬、2013年度に採用する計110人を内定。うち北京や上海など中国の9校が44人を占めた。しかし内定先を中国と伝えると、「親が心配している」などとして17人が辞退。いずれも20~30代の若手で、繰り上げ内定を出すなどしたものの、最終的に中国への赴任者は31人を確保するにとどまった。
中国以外に赴任する教員の内定辞退はほとんどないといい、財団の担当者は「尖閣問題で起きた大規模な反日デモや、微小粒子状物質(PM2.5)による大気汚染で、中国での勤務に不安を感じる人が多い」と話している。
このため中国の各校は、追加募集のほか、今いる教員が免許外の教科を掛け持ちしたり、経験の浅い教員が担任を受け持てるよう研修したりと対応に追われた。
赴任を決めた人の決意は固い。上海日本人学校に赴任する札幌市の小学校教員、小栗雄太さん(27)は「反日感情が強いのは一部。子供も暮らしており大丈夫」と親を説得したと話すが。こうした人ばかりではない。財団は不安を和らげるため、内定者向け研修会で日本人学校元教員との交流会を始めた。
日本人学校に詳しい東京学芸大の佐藤郡衛副会長は「断片的な情報で不安が広がっている。日本人学校は、緊急時の対応策を作り、赴任者の理解を得ることが必要だ」と指摘している。
リソース:日本経済新聞
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