2013年1月20日日曜日

中国で米国旅行の魅力を猛烈アピール

日本も新商品 開発を怠れば米国に負ける

日中関係が大きく揺れているため、日本を訪れる中国人観光客が激減している。しかし、暦はそんなこととは関係なしにいつものスピードで進んでいる。中国では元旦と2月上旬に迎える春節(旧正月)といった大型連休が日に日に近づいてくる。年末ボーナスの支給額も話題になり、中国各地では連休を利用しての海外旅行に対する関心が高まっている。

例年だと、身近にあり、雪景色の温泉もある日本も結構いい選択肢だったのに、今の日中間のムードでは日本行きを選んでいいのか躊躇する人が多いようだ。しかし、冬の中国だと、人気を集められる観光地が限られてしまうし、暖かい海南島は評判が悪いので敬遠される傾向にある。そうなると、目は自然と海外のほかの観光地に向かう。乾季で暖かいタイも魅力的な目的地として人気を集めている。

大型連休に焦点を当て 集中攻勢を仕掛ける米国

その大型連休に焦点を当て集中攻勢を仕掛ける国もある。飛行機の移動時間が十数時間もあるアメリカだ。最近、タイに負けないほどその魅力をあの手この手でアピールしている。

アメリカの中国語紙「世界日報」によれば、今年、元旦や春節をアメリカで過ごす中国人観光客向けツアーの内容は、一段とアメリカ色の強いものになっている、という。これまでのようにディズニーランドでの年越しといったことではもう満足できない観光客も少なくなく、旅行業者は航空母艦での年越しディナーや、クルージング、NBA(バスケットボール)観戦、パサデナでのローズパレードなどといった行程を増やして、観光客を引き付けようと考えている。

今年の9月に、旧ソ連製の未完成の空母「ワリヤーグ」を購入して、国産の推進システムなどを取り付けるなどして改修した中国初の空母「遼寧号」が海軍に正式に就役し、艦載機の離発着テストも成功したばかりだ。それで否応なく中国国内では空前の空母ブームが巻き起こった。

空母での年越しディナーといったアイデアは、明らかに中国国民の間にある空母ブームを狙ったものだと私は思う。憎いアイデアだが、中国人観光客の消費心理に対する研究は、なかなかのものだと舌を巻かざるを得ない。

その作戦は見事に成功したようだ。アメリカの旅行業者の関係者によれば、今年は中国からの300名の観光客が春節の大みそかにサンディエゴ空母博物館でアメリカ式のディナーを楽しみ、春節にはNBA観戦をするという。ツアー料金も航空代金を含むものと含まないものの2種類を用意している。

同記事によれば、アメリカを訪れる中国人観光客のニーズはどんどんユニークなものとなっており、とりわけ春節期間は、アメリカの記念日やセレモニー、スポーツ観戦などさまざまなイベントへの参加を希望している、という。こうした観光客のニーズを満たすために、旅行社では1枚600元~700元(1元は約13円)もするNBAのチケットを代理購入することもある。また、グラミーやオスカーの受賞式への参加に興味があり、ボックス席の予約を依頼する観光客もいるそうだ。

以前はそれほど注目されていなかったパサデナのローズパレードも最近、結構人気があり、今年はパレードが見える一泊1000元もするホテルの予約や、安くて100元、高いものだと500元以上のスタンド席チケットの購入を求め、元旦に世界中の観衆とともにパレードを見ることに意義を感じる観光客も増えている、という。

あの手、この手で 中国人向け商品を開発

旅行代金が高いので敬遠されていたアメリカの休暇期間の繁忙期ですら、現在では中国とは違うアメリカでのバケーションの雰囲気を味わいたいと希望する中国の旅行客が増えているという。

アメリカでのクルージングも人気となりつつあり、春節にクルーズ船の上からカリブ海を眺めるのが新たなレジャーとなっている。ツアーは1週間から13日ほどで、船上だけでなく陸地での行程もアレンジし、観光客にコストパフォーマンスの高さをアピールしている。ハワイもまたアメリカ観光の必須ルートのひとつとなっている。

春節期間の旅行商品としては、海外留学、家族旅行、ドライブ旅行、飛行機チャーター、実業家留学、見本市ツアーなどがあり、ドライブでのアメリカ西部撮影旅行は5000元前後である。プライベートジェットツアーは9日間の行程で、ロサンゼルスからモントレーベイまで飛行機で向かい、ホエールウォッチングや17マイルドライブの風景を楽しんだ後、サンフランシスコやラスベガスなどを巡り、価格も5000元ほどである。

また、実業家向けツアーでは、サンフランシスコ市長や、シリコンバレー、ロサンゼルスなどの中国商工会の担当者などとの会合も手配している。

中国人観光客を狙うために、こうした新しいアメリカ旅行商品がどんどん開発され、それぞれそのユニークさで観光客の目を引きつけようとしている。

中国人観光客なしでは成立しにくくなる日本のインバウンド観光事業は、今や政治的寒波に襲われ、惨憺たる状態にあるが、いずれ日中関係は花が咲く正常な季節に戻ってくるだろう。そのときのためでも、今や日本の魅力をアピールできる新しい観光商品の開発を考えなければならない。でないと、せっかく日中関係が正常を取り戻しても、観光商品の魅力においてタイやアメリカなどのライバルに負けてしまえば、まったく意味がなくなってしまう。

リソース:ダイヤモンド


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