台湾本島北西約200キロの離島、馬(ば)祖(そ)列島(連江県)で、カジノ特区設置の是非を問う住民投票が今月7日に行われ、可決された。対中国の軍事上の最前線だった馬祖は、台湾初のカジノリゾート開発で中国本土からの観光客大幅増を狙う。一方で「自然破壊や治安悪化が心配」「過度な中国頼みは危険」との懸念も残る。美しい景観から「台湾の地中海」と呼ばれる島々は期待と不安に揺れ動いていた。
12日、中国福建省の省都、福州の馬尾港から台湾船籍の定期連絡船に乗り、1時間半後、馬祖の中心、南(なん)竿(かん)の福(ふく)澳(おう)港に上陸した。
定員122人の小型船だが空席が目立ち、ほとんどが福州側を訪れた帰路の台湾旅行客だった。出張帰りの年配の男性は「今時の陸客(中国人客)は台北や高雄でグルメやショッピングさ。こんな田舎には来ないよ」と語った。
事実、県政府(県庁)所在地の南竿も、道行く人影はまばら。目につくのは台湾軍の軍用車や兵士の往来だ。観光スポットも軍事施設跡地などが多い。
福澳港では「枕戈待旦」(戈を枕に夜明けを待つ=就寝時も油断しない)という蒋介石書の巨大スローガンが目に飛び込んだ。
馬祖は、かつて国共内戦に敗れて台湾に逃れた蒋介石率いる中国国民党(国民党)政府が長く中国側と相対した軍の最前線。金門島と同様、日本統治時代を経ていない。
その金門島がアモイ、台湾本島と同じ●(びん)南(なん)語(台湾語)エリアなのに対し、馬祖は●東語(福州語)エリア。福建省が台湾側に共同開発を持ちかけている平(へい)潭(たん)島とは指呼の距離だ。馬祖は、急速に進む中台経済交流の最前線に変わりつつある。
漁業中心の馬祖の経済は、最盛期6万人が駐留した軍に依存してきたが、時代は変わった。近年の中台関係の緊張緩和の結果、馬祖の軍事上の役割は小さくなっている。
「軍は今後も規模縮小の見通しで、その先を考えなければならない。観光の比重はさらに重くなる」と連江県観光局の劉徳全局長。
10年以上カジノ開設をめぐる議論が展開された台湾では、馬英九政権下の2009年1月、離島に限り開設を認める法改正が実現。同年9月には台湾海峡の澎湖諸島で初の関連住民投票が行われたが、風紀の乱れなどへの懸念が強く、否決されている。
注目された馬祖の住民投票は、賛成1795票(有効投票の57%)と反対1341票(同42%)を上回り、台湾初のカジノ開設に向け関門を突破した。
行政院(内閣)は9日、カジノを交通部(国交省)管轄と決定し、関連法の整備に動き出した。もっとも、「実現は5年から10年先」と目され、狭い社会で賛否二分しただけに、住民の表情もさえない。
同県の楊綏生県長(知事)は、「1万人以上の雇用創出に加え、年間10万人程度の観光客数も数年で400万~500万人に増大する」と、カジノ開設の経済効果に期待を寄せる。・・・・・・
リソース:MSN産経ニュース
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