【北京=大越匡洋】堅調なインフラ投資を支えに、中国で生産や消費が上向き始めた。「中国経済は底入れした」との見方から、東京株式市場でも鉄鋼や機械など中国景気との関連が強い銘柄を買い戻す動きが広がる。だがいまのところ投資以外に景気のけん引役は見当たら売上高はない。回復の勢いは力強さを欠き、持続的な安定成長の軌道には乗り切れていない。
「成長は水増しのない確かな成長でなければならない」。習近平総書記は就任直後の11月末、経済情勢に関する座談会で「水増し成長」への警戒感をあらわにした。
足元は改善基調
足元では経済指標は改善基調にある。工業生産は11月まで3か月連続で伸び率が拡大。生産活動をより正確に映すとされる電力使用量も、11月は2か月連続で増え、伸びも前月を上回った。消費動向を示す小売売上高は4か月連続で増加ペースが加速した。それでも習氏が「水増し」を懸念するのはなぜか。
世界の粗鋼生産量は10月からプラスに転じ、11月は前年同月比で5.1%増と、全体の半分近くを占める中国の増産で急回復した。中国政府が景気下支えのために今夏から鉄道などインフラ投資の認可を加速し、中国メーカーが需要増を当て込みこぞって増産に動いたためだ。世界3位の宝鋼集団の上海市の工場は生産ラインが、「ほぼフル稼働」(関係者)という。
だが、足元の活況とは裏腹に、早くも「作りすぎ懸念」が浮上している。鉄鋼業の11月の購買担当者景気指数(PMI)は景気の拡大・悪化の節目となる50を下回る49.2。10月の52.7から急落した。9月から上昇を続けた原材料の輸入鉄鉱石価格も、12月に入り1トンあたり約7ドル(約600円)落下している。
鉄鋼など重工業は国有企業が多く、もともと生産能力の過剰を抱える。
いったん需要が上向くと一斉に増産に走り、成長をかさ上げする傾向がある。しかし、足元では需要の伸びは実際には見込みよりも緩やかで、「再び在庫が増える恐れがある」(業界関係者)。
「2017年まで毎年のように新たな路線が開通する」。長江をまたぐ地下鉄2号線の試験運転が28日に始まる湖北省武漢。地元では総額で1兆円を超える建設投資に期待が広がる。湖北省の1~9月の成長率は2桁を超え、内陸部の投資需要が中国の景気を支えているのは確かだ。
とはいえ、政府による投資認可の加速はあくまでも景気の下支え策。追加の財政支出を伴う経済対策ではない。逆に、地方はこれまでの景気の減速で税収が伸び悩む。
実力以上の成長
「日本と戦争が起きる。国家の危機に協力すべきだ」。10月末、河北省の一部の地方政府は企業から通常の数倍の税金を集めた。地方政府は自らの評価を上げようと、実力以上に収入を「水増し」してでも、目先の経済成長という実績を追い求める傾向が強い。
不良債権化を恐れ、銀行は地方のインフラ投資向けの融資を渋っている。しかし、「地方融資平台」と呼ばれる地方政府の資金調達会社が今年1~9月に発行した債券は計4700億元(約6兆千億円)を超え、すでに昨年分を上回った。
いったん事業採算が悪化して資金回収が滞れば、信用不安が金融システム全体に広がりかねない。中国経済は新たなリスクも抱えつつある。
リソース:日本経済新聞
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