2013年4月20日土曜日

カレーライスを中国の“人民食”に! – ハウス食品

大規模試食作戦で認知拡大 日本食以外にも用途広がる

日本の国民食、カレーライスが中国でも普及しつつある。その立役者となっているのがハウス食品の現地法人、上海好侍食品有限公司だ。とにかく多くの中国人消費者にカレーライスを食べてもらう地道な試食作戦で認知拡大に成功。業務用カレールーは売上高がこの3年で倍増している。しかも、その主要販売先は意外にも日本料理店ではなく、中国系のファーストフードチェーンだという。

「とにかく食べてもらう」作戦

「米を食する国では、必ずカレーライスが受け入れられる」と強調する上海好侍食品董事総経理の羽子田礼秀氏
「米を食する国では、必ずカレーライスが受け入れられる」と強調する上海好侍食品董事総経理の羽子田礼秀氏

中国人にとって、ご飯にかけて食べる日本式のカレーライスは舶来の新食品だ。食に対するこだわりが強い中国人の間にカレーライスを広めるに当たって、上海好侍食品が打ち出した作戦は「とにかく人が多い場所へ行って、カレーを食べてもらい、認知度を上げること」(同社董事総経理の羽子田礼秀氏)だった。

同社はまず、企業、工場の食堂に目を付けた。労働力不足が顕在化している製造業では近年、人材の定着率を上げるため、食事を含む福利厚生の充実にも気を遣っている。そこで、カレーライスを新メニューのひとつとして取り入れてもらおうと考えたのだ。工場の開拓では、日系メーカーの総経理へ直接手紙を出す作戦も奏功した。「特に外食の少ない工業地区に進出されている日系企業の総経理は、たまにはカレーライスを食べたいのでは」と考えた羽子田氏の思惑通り、手紙の返答率は高く、結果として数々の大手メーカーでカレーメニューが採用された。

同社がもうひとつ目を付けたのは、大学の食堂だ。新しいものを貪欲に吸収する大学生は、同社にとっても「金の卵」(羽子田氏)。上海市内の12大学に「無料試供隊」を派遣するなど、採算度外視でとにかくカレーを口にしてもらったという。このほか、店頭での販促やコミュニティでのイベント、幼稚園訪問などで、カレーライスという食べ物の認知拡大に努めてきた。「当社の営業マンは料理ができないと務まらない」と羽子田氏は笑う。

現在、上海市嘉定区にある同社工場では、家庭用と業務用合わせて月約700万食分のカレールーを生産している。工場は24時間稼働しており、今後の生産能力拡充も課題となっているという。

業務用の主要販売先は非日系

こうした地道な作戦により、同社製品の販路は確実に広がっている。家庭用カレールーは現在、全国約100都市1万店舗規模で販売されている。またハウス食品が壱番屋と合弁展開しているカレーチェーン「CoCo壱番屋」は現在24店舗を展開し、若い女性層を中心に人気を集めている。

一方、業務用カレールーの売上高もこの3年で倍増している。ただ、その主要販売先は意外にも日系飲食店ではなく、中国系のファーストフードチェーンだという。

同社の業務用カレールーは970 グラムパックで約50 人分。写真中央下のモノクロパッケージは、飲食店のシェフやバイヤーに試食してもらうためのサンプル品
同社の業務用カレールーは970 グラムパックで約50 人分。写真中央下のモノクロパッケージは、飲食店のシェフやバイヤーに試食してもらうためのサンプル品

同社の業務用販売で上位の顧客は、台湾地区系大手ファーストフードチェーンだ。ハンバーガーやフライドチキンなどの主力商品に加えて、チキンカツカレーも販売しており、全国の店舗用に業務用ルーを納入しているという。

このほか、同社では中国各地の都市、地域でしか展開していない中小のファーストフードチェーンを重点的に開拓してきた。こうしたチェーン店はメニューの差別化のため、また味の均一化のため、同社のルーを導入しているのだ。

日本料理店は単〜数店舗規模の展開が多く、店自身がこだわりのカレーを作ることが多いことから、業務用における販売比率が低くなっている。ただ、日系飲食チェーンの進出ラッシュに伴って、引き合いは増加傾向にある。

最近では米国系大手ファーストフードチェーンもカツカレーを打ち出した。同社製品が使用されているわけではないが、カレーをメニューに加えたことの宣伝効果は大きく、同社にとっても強力な追い風となっている。

業務用でもうひとつの重要な販売先は、弁当を取り扱う小売店。中国各地の日系スーパーのほか、中国系のスーパーへも販路が広がっており、日系コンビニの中食においても、同社製品を使ったカレーメニューが欠かせなくなっている。

レトルトに潜在性を見込む

同社では今後の伸びを見込んでいるのがレトルト製品だ。同社は現在、家庭用レトルトカレーも販売しており、今後は飲食チェーンやコンビニにおいても簡単便利な業務用レトルト製品が広まっていくとみている。

同社の最終目標は「カレーライスを中国の“人民食”にすること」(羽子田氏)。中国人消費者のカレー認知率は全国平均で30%、北京や上海で60%を上回ったとみられる。調査会社の2011年の市場データによると、カレールーの購入率は北京で22・4%、上海で21・7%に上っている。日本の91・4%には比べるべくもないが、台湾地区の23・4%に肉薄している。同社の長い道のりはまだ始まったばかりと言えそうだ。

日中でなぜ違う? ハウスカレーの味

八角などブレンドした家庭用 業務用は日本の味が売れ筋に

「日本のハウスカレーとは随分と味が違う」―中国で同社のカレーを食した経験がある日本人の率直な感想だろう。実際、同社では中国の家庭用商品にアレンジを加えている。

「百夢多咖喱(バーモントカレー)」には、中華料理に広く使われている八角などの香辛料をブレンドしており、色もカレー粉に近い黄色を強くしている。羽子田氏自身はオリジナルの味にもっと近づけるべきという意見だったが、「試食調査でも八角を入れた方がよりおいしいという意見が圧倒的多数を占めたため、この味に決めた」のだという。

一方、業務用は家庭用ほどアレンジを加えていない。「レストランでカレーを食べる人は本格的な味を求めている」(羽子田氏)ためだ。同社の業務用製品は中国でカレーが輸入品だった時代に培われた日本の味をコンセプトにしており、実際に日本の味に近い「爪哇風味咖喱(ジャワカレー)」が売れているのだという。

リソース:ビズブレッソ.ネット

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