立山黒部アルペンルートは夏山シーズンを迎えた。東日本大震災で全線開業以来最低の観光客数に終わった昨年から100万人の大台へのV字回復はなるのか。官民挙げた国内外へのPR攻勢は2015年春の北陸新幹線開業を起爆剤にするための下地づくりとみることもできそうだ。
■運賃増収に期待
11日、同ルートの大観峰駅の屋上に据え付け式のウッドデッキが登場した。標高2333メートル。名付けて「雲上テラス」からは後立山連峰とエメラルドグリーンに輝く黒部湖を一望できる。快晴のこの日、富山市内は34度に達した気温がここでは20度に達しない。
トロリーバスとロープウエーを乗り継ぐ通過駅だった同駅に涼しさと絶景が楽しめる整備を施し「(山岳観光の拠点)室堂からあと1駅足を伸ばしてもらいたい」。運営会社の立山黒部貫光(富山市、佐伯博社長)は運賃増収に期待を寄せる。
富山市は現在、JR品川駅など首都圏主要駅の液晶画面広告でおしゃれな登山ウエアに身を包んだ女性「to
yamaガール」をPRしている。富山とトゥ・ヤマ(山へ)とをかけた。富山県はJR山手線の1編成(11車両)車体に広告を張り付け、夏山の魅力を訴える。16日まで名古屋駅中央コンコースを富山、長野両県と共同の大規模広告で埋め尽くす。官民挙げての誘客活動だ。
目指すは82万7千人に終わった昨年の落ち込みから100万人の大台乗せ。道のりは険しい。東日本大震災の影響で観光自粛にさらされた昨年同時期比では約3割増で推移しているが、10年比では楽観できない。
■中国人客に照準
円高による海外旅行人気で国内誘客は苦戦している。春先の「雪の大谷」を目当てにした台湾からの観光客は富山―台北間の定期便就航が奏功して一昨年並みに回復しているものの、韓国からの回復は鈍い。富山県などと共同で中国人観光客の掘り起こしを急ぐ。
11日には中国・広州市の新聞社、テレビ局関係者が同ルートを取材、6月下旬には中部北陸圏の広域観光圏「昇龍道」PRの一環で西安市のメディアを招待した。
「富山を代表する『百万人観光地』の看板を守る」(佐伯社長)。1971年の全線開業、20年後の91年に過去最高の149万6千人を記録したあとバブル崩壊とともに減少傾向が続き、2000年以降は100万人維持がアルペンルートの合言葉だ。
今春、立山連峰の氷河が学会に認定された。氷河を発見、調査してきた立山カルデラ砂防博物館(富山県立山町)は31日、氷河を眺めながら雄山に登る学芸員同行ツアーを実施する。定員20人の枠は募集開始から2日間で埋まった。3日には弥陀ケ原・大日平が国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録された。国内登録地としては標高が最も高く、同ルートを取り巻く山岳観光地としての新たな魅力づくりにつながる。
北陸新幹線金沢開業により鉄道の年間輸送能力(座席数)は現在の2倍超に達するとの試算もあり、アルペンルート観光客の底上げに直結しそうだ。それまでに新鮮な話題を提供し続けることが15年の飛躍につながる。来年は完成50周年を迎える黒部ダムを主役に据える予定だ。
リソース:日本経済新聞
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