2013年3月16日土曜日

アングル:進まぬ中国のシェールガス開発、異分野企業の参入で遅れも

[北京 11日 ロイター] 米国がシェールガス革命に沸くなか、埋蔵量が世界最大規模とされる中国のシェールガスの開発が遅々として進んでいない。

商業生産で目立った成果がおらず、専門家によると、2015年までに65億立方メートルを生産するという政府目標の達成は難しい状況。

先に行われた探査権入札では、ガス井の掘削実績がない企業ばかりが探査権を落札。実績のない企業が市場に参入することで、目標達成がさらに危ぶまれる恐れもある。

一方で、探査権を落札した企業は、専門知識を外部から取得する必要があるため、シェールガスの採掘に必要な「フラッキング(水圧破砕)」技術を持つシュルンベルジェ(SLB.N: 株価, 企業情報, レポート)やハリバートン(HAL.N: 株価, 企業情報, レポート)などの海外企業に商機が訪れる可能性もある。

<不動産からタバコ販売まで100社以上が応札>

政府が2年前に初めて実施したシェールガル鉱区開発入札では、中国海洋石油(CNOOC)(0883.HK: 株価, 企業情報, レポート)、中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)(0857.HK: 株価, 企業情報, レポート)(PTR.N: 株価, 企業情報, レポート)などの大手国有エネルギー会社が権益を独占した。

ただ、先に実施された2回目の入札には、不動産開発業者からタバコ販売業者まで100社以上から応札があった。

補助金目当ての応札があったとみられるほか、業界関係者によると、資金力が豊富な企業が中国石油の10倍の応札価格を提示したケースもあった。

中国国内のシェールガスブームを象徴する事例と言えるが、複数の独立系企業を競争させて、米国のシェールガス革命を再現しようという中国政府の意図も垣間見える。

トライゼン・コンサルタンシー(シンガポール)のトニ・レガン氏は「(応札した企業は)実際の探査コストや開発コストを詳しく知らないのではないか」と指摘。「潜在的な巨大市場にわれ先に乗り込むのが狙いなのだろう」と述べた。

<米国よりも地下深くに存在、埋蔵地も拡散>

中国のシェールガスが大きな可能性を秘めていることは明らかだ。

中国政府は技術的に採掘可能なシェールガスを25兆立方メートルと試算。米エネルギー情報局(EIA)の推定では36兆1000億立方メートルだ。いずれも米国の推定埋蔵量24兆4000億立方メートルを上回っている。

ただ、中国では、米国よりも地下深くにシェールガスが存在するケースが多く、埋蔵地も拡散している。このため、米国で利用されている採掘技術をそのまま中国で使うことは難しいという。

国内で特に有望とされる鉱区を開発する中国石油や中国石油化工(シノペック)(0386.HK: 株価, 企業情報, レポート)などの大手国有企業も、生産は遅々として進んでいない。

両社は四川省を中心に昨年5月までに60本以上のシェールガス井を掘ったが、中国石油が最も有望とされる鉱区で昨年11月までに生産したシェールガスは1100万立方メートル強にすぎない。

2011年の米国のシェールガス生産は2400億立方メートル。国内ガス生産の約3割を占めた。

法律事務所ノートン・ローズによると、シェールガス井を1本掘るコストは、中国が500万ドル─1200万ドル、米国では平均270万─370万ドルだ。

中国のシェールガス埋蔵地で、フラッキングに使う水が不足していることも大きな課題だ。

専門家によると、米国ではガス井1本につき通常800万─1000万ガロンの水が必要になるが、中国では地質の違いにより、1000万─1300万ガロンの水が必要という。

<米国企業に商機も>

先の入札で探査権を落札した16社のうち、6社は国有企業だった。このうち多くが、華電集団、神華能源、中煤能源など大手電力会社や石炭会社の関連企業だ。

残りは、地方政府の支援を受けて新たに設立されたエネルギー投資会社が8社、無名の民営企業が2社だった。

この16社は今後3年でシェールガス開発に少なくとも20億ドルを投資する方針を示している。

電力大手の華電集団は、すでにシュルンベルジェと提携。契約獲得を視野に米国企業が中国企業に出資する動きも出ている。

シュルンベルジェは昨年、香港上場の油田サービス大手、安東油田服務(3337.HK: 株価, 企業情報, レポート)に8000万ドル出資、20.1%の株式を取得した。

ハリバートンは、掘削業務で中国の華油能源と提携した。

ただ、業界関係者の間では、知的財産権保護の観点から、当初の契約は、破砕水やサポート機器などにとどまり、実際の掘削は国内の中小業者に頼らざるを得ない状況になるのではないか、との見方が出ている。

一部の新規参入企業は、調査・開発よりも目先の投機的な利益に関心があるとの見方も出ており、中国のシェールガス革命の実現には、長い道のりが続く可能性もある。

(Chen Aizhu記者;翻訳 深滝壱哉 編集 山川薫)

リソース:ロイター

0 件のコメント:

コメントを投稿