2013年3月8日金曜日

中国の環境予算12%増 大気汚染への不満を意識

13年、歳出全体の伸びを上回る





















【北京=菅原透】中国の中央・地方政府は環境対策を強化する。5日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開幕に合わせて発表した2013年の予算案では、環境対策費を前年実績比で12.1%増やした。歳出全体の伸びを上回る高い水準だ。大気汚染をはじめとする環境問題への市民の不満を意識した形。全人代を経て正式に発足する習近平政権の重点課題となる。

「決意を固めて大気汚染、水質汚染、土壌汚染を解決していく」。温家宝首相は5日の政府活動報告で環境重視の姿勢を打ち出した。

予算案によると、中国の中央・地方政府は13年、省エネ・環境保護関連に3286億4700万元(約4兆9300億円)を投じる。12年の13.3%増からは鈍化するものの、歳出全体の伸び(9.1%増)を上回る予算を割く。

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まず力を入れるのは、発電所の電源構成の改善だ。中国では火力発電の比率が71.5%と高く、その92.5%を占める石炭火力が大気汚染の元凶とされる。全国で導入が始まったばかりの太陽光発電の発電能力は年内に現在の4倍に増強。風力や原子力、水力も能力を10~30%増やし、「脱・石炭」を加速する。

火力発電では、汚染物質の排出が少ない天然ガスの利用を進める。中国は新型天然ガスの一つ「炭層ガス」の埋蔵量が世界3位。同じ新型天然ガスの「シェールガス」より採掘が容易とされ、中国は炭層ガスの開発を加速する。こうしたクリーンガスでの発電を奨励する政策も打ち出す。


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自動車の排ガス対策の強化も進める。中国の自動車保有台数は11年時点で1億台を超え、5年で2倍に急増している。政府は17年末までに欧州並みの燃料品質基準を達成する目標を掲げる。燃料中の硫黄成分を減らし、大気汚染を防ぐ狙い。

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など化石燃料の消費を減らす次世代エコカーの普及も進める。自動車業界では「政府は新たな補助金制度を導入する」との期待も高まる。

もっとも、中国では新たな政策が打ち出されてもすぐには浸透しない。太陽光発電でも政府は補助金制度を導入済みだが、「発電事業者にお金が振り込まれない」(業界筋)問題があった。

排ガス規制強化では、国有企業の多い石油化学業界が燃料をつくる製油所改修の投資負担が重いと訴え、導入を先延ばししてきた経緯がある。習体制では、こうした既得権益層をどう打破するかが最初の壁になりそうだ。

リソース:日本経済新聞

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