2013年2月27日水曜日

靴屋で磨いたニーズつかむ嗅覚

フィリピン SMインベストメンツ副会長 テレシタ・シー・コソン氏(62)

昨年12月、中国・重慶に東京ドーム2個分の売り場面積を持つ巨大なショッピングモールが開業した。手掛けているのはフィリピンの小売り最大手グループ。持ち株会社SMインベストメンツ副会長のテレシタ・シー・コソン(62)は、顧客のニーズをつかむ嗅覚を武器に国内外の事業拡大の先頭に立つ。

中国福建省がルーツの父ヘンリー・シーは比長者番付1位。一族は日本の孫正義をしのぐ91億ドル(8463億円)の資産を持つ。テレシタは後継者と目されるが、ただの2世ではない。原点にあるのは「移民の家族というメンタリティー。後は貧しい生活が原点にある」とテレシタは言う。

振り出しは父がマニラで開いた小さな靴屋だった。幼いころから家業を手伝ったテレシタは、店番をしながら路上を行き交う人々を観察。客の足に靴を合わせ、どの客層がどんな商品を求めているかを肌で感じてきた。どんな教科書でマーケティング理論を学ぶより、効果的な“授業”だった。

大学卒業後、大学院でビジネスを学ぶことを望んだが、父から家業を継ぐよう喩された。利益をほぼ全て投資に回して事業を拡大する猛烈な商法。華僑のビジネスは机上ではなく、現場で学ぶべきだとの考えだ。

SMグループは、ファーストリテイリングと提携し、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開する。ファストリ社長兼会長の柳井正は近著でテレシタに触れ、「出会った中で最優秀の経営者」と書いている。フリピン人であふれる巨大モール。行き交う人々を観察しながら次の一手を練るテレシタの鋭い目は、靴屋の店番だったころのそれと変わらない。

SMインベストメンツ:
SMは靴屋(シュー・マート)の頭文字。小売り、不動産だけでなく、比最大手銀行も傘下に持つ複合企業。主力のショッピングモールは12年末時点で国内45、中国に6店舗を展開する。12年1~9月期の売上高は前年同期比13%増の1579億ペソ(約3600億円)、純利益は同14%増の229億ペソ。

リソース:日本経済新聞

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