2013年2月11日月曜日

中国、輸出先・品目に広がり モノの貿易額世界一

中国が2012年、輸出と輸入を合わせたモノの貿易総額で米国を抜いて世界一となった。01年の世界貿易機関(WTO)加盟をきっかけに急拡大。安い労働コストをテコに「世界の工場」として、輸出先や製造品目の幅を広げたことが背景にある。ただサービス分野を含めると、なお米国と1兆ドル超の差がある。貿易の質を向上するにはサービス産業の競争力を高める必要がある。

中国税関総署が先に発表した貿易総額は3兆8667億6千万ドル(約358兆円)。モノに限った実績で、米商務省が8日発表した米国の3兆8628億ドルを約40億ドル上回った。すでに輸出額ベースで、中国は09年にドイツを抜いて世界1位になっていた。

WTO加盟をきっかけに急拡大した中国の貿易額。その中身は10年余りで大きく変わった。

当初、貿易をけん引したのは、輸入した原材料を中国で加工・組み立てて製品として輸出する「加工貿易」だった。靴や繊維、家具、家電など労働集約型の工場を呼び込み、世界市場に供給した。

その後、国内産業のすそ野が次第に広がり、材料や部品を国内で調達する動きが加速。輸出製品には通信機器や建機、自動車など付加価値の高い製品も増えた。自動車は昨年、初めて輸出台数が100万台を突破した。

貿易相手の多様化も拡大を後押しした。01年時点では日米欧が貿易総額の半分近くを占めたが、12年には3分の1超まで低下した。「欧州向けなどが低迷する状況で、東南アジアや南米など新興国向けの需要は旺盛」(海運大手幹部)という。

特に、10年に自由貿易協定(FTA)を本格発効した東南アジア諸国連合(ASEAN)とは、12年の貿易総額が前年に比べて10%強増え、すでに日本を上回る貿易相手となった。

とはいえ、中国の貿易収支は偏りが大きい。12年の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、2311億ドルの黒字。景気減速により原材料などの輸入が伸び悩み、前年に比べて48.1%の大幅増となった。貿易規模の拡大と輸出超過が続けば、米政府は人民元への為替操作批判を一層強めるとみられ、中国の通貨政策のかじ取りは一段と難しくなる。

輸出の超過は構造的な問題だ。中国政府は景気が鈍化するとインフラ投資を積極化する傾向にある。08年の金融危機時は、4兆元(約60兆円)の景気対策が投資の過熱や過剰生産を招いた。国内であふれた商品は輸出に回り、欧米との貿易摩擦が激しくなる。

投資や輸出への依存から脱却して輸入を増やすためには、内需主導型への転換が欠かせない。国内でサービス産業を育成すれば貿易拡大にもつながる。共産党・政府は13年の経済政策の重点課題として内需拡大を挙げ、消費の底上げに注力する方針だ。

中国の国内総生産(GDP)に占めるサービス産業の比率は4割超で、7割を超える日本など先進国と比べて低い水準にとどまる。中国政府は1月末、広東省深セン市の一部で企業への貸出金利を自由化。サービス業など新興産業に資金が流れやすい仕組みを作るなど改革に乗り出した。

リソース:日本経済新聞

0 件のコメント:

コメントを投稿