2013年1月20日日曜日

日本を知らない“中国新世代”がやってくる

日本はもはや、「善」でも「悪」でもない?

消費拡大の続く中国で日本のモノを売りたいと考える日本企業、日本人は年々増えるばかりだ。だが、刻々と変わりゆく消費世代の特徴を、的確につかめていると言えるだろうか。

今、消費する世代の中心、新世代の中国人として注目されているのは、1980年代生まれ(だいたい20代)の「80后(パーリンホウ)」、ないしは1990年代生まれ(同10代)の「90后(ジョーリンホウ)」だ。正確には「70年代半ば生まれ以降」も含まれる。

中国のメディアでも何度となく取り上げられ、彼らを分析する書籍も多数発売されている。
彼ら世代の特徴を簡単にまとめるなら、
「一人っ子で、反日教育を受ける一方、幼少期から日本のコンテンツに触れ、日本に対し複雑な感情を抱く」
「パソコンや携帯電話・スマートフォンを使いこなし、インターネットにアクセスする世代」
「オンラインショッピングで家族(親や子供)のぶんも含めて安く賢く、いいモノを買い、オンラインバンキングやオンライントレーディングで小遣いをためる」といったところだ。

新世代の中国人は、幼いころから日本のコンテンツに囲まれて育った。テレビでは「ウルトラマン」や「一休さん」、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」。

中国製のファミコンの非公認互換機を使い、ファミコンの海賊版ソフトのデータがたくさん詰まったカセットを挿し込み遊ぶ子供たちが、かつて都市部にはあふれていた。

メイド・イン・ジャパンの威光は、どこへ?

中国では今、スマートフォンが一気に普及している。調査会社IDCの発表によれば、2013年の中国向け携帯電話の出荷台数は3億8000万台となる見通しで、そのうち3億台がスマートフォンになるという。また今年、スマートフォンユーザーは、全13億人超の人口のうちの5億人にまで増えると予測されている。

中国人のスマートフォンの主な利用用途は、マイクロブログとチャットなどを利用したコミュニケーションや、ゲームなどの娯楽である。

「Angry Birds」という、フィンランドRovio社のスマートフォン向けゲームが中国でブレイクし、既存のゲームユーザーに加え、中高年や子供にも人気となった。

最近70后、80后の世代が自分の親や子供に、スマートフォンやタブレットを渡してゲームをさせる姿を、空港や駅、列車内などでよく見かける。彼らが遊ぶゲームに、日本のゲームはない。

現在20代の80后、ないしは30代の70后の実家や親族の家には、数年から十数年は使っているだろう日系メーカーの洗濯機、冷蔵庫、DVDプレーヤー、テレビが現役で稼働している。彼らは実家で生活していた時代、日本の家電に囲まれて育った。

だが今、家電製品ではハイアールが台頭。白物家電においてもAV家電においても、中国人が自国メーカーの製品に躊躇することはなくなった。

中国製も、壊れなくなった

かつて中国人が持っていた「中国製品=すぐ壊れる」という図式は、「中国製品=壊れる心配はなく、最低限の機能はそろっている製品」「外国製品=性能がいい製品」に変わった。今の子供たちは中国メーカーの家電に、自然と囲まれて育っている。

アニメにおいても、メイドインジャパンの威光は今や昔。今でも青少年向けのジャンルでこそ日本のアニメが人気だが、子供向けアニメでは、「喜羊羊与灰太狼」をはじめとした中国のアニメがヒットしている。

かつて人気だったドラえもんなど、日本のアニメの存在感は低下。子供向けキャラクターということでは、ベネッセの中国版こどもちゃれんじ人気で、「しまじろう(巧虎)」が健闘しているのが目立っているくらいだ。

車にしても同じようなことが言える。日本車をあまり見かけない北京に対し、日本車がよく使われている内陸省など地域差はあるが、反日デモの影響も含め以前と比べて日本車の勢いは衰えている。

日本を“知っている”世代を開拓できているか?

「悪の軍事大国・日本」と「ハイテクで面白い日本」の板挟みに悩みながら育ってきた70后~90后世代。しかしその次の世代となる2000年代生まれの00后は、日本の製品やコンテンツに触れることなく育つ、はじめての世代となる。

では、日本の製品やサービスが中国でもう挽回できないかというと、まだそうともいえない。

最近、中国のパソコンショップの集まる電脳街を歩くと、タブレットを買い求める中高年が目立つようになった。また徐々にではあるが、今までITに消極的だった中高年が、パソコンを利用し始めている。

70后~90后の実家に日本の家電や車があるくらいだから、中高年の日本製品への印象のよさは若者以上である。

中高年のITへの歩み寄りや中高年向けのサイト登場で、やがて中高年が自ら情報をインターネットで調べ、オンラインショッピングをすることが当たり前となる時代が、そう遠くないうちにやってくるだろう。

中高年の中国人は、まだITに詳しくないために、70后~90后に財布を預けている状態だが、日本に買い物旅行に来る中高年がいるように、自ら財布を握り自身の判断でモノを買うようになるだろう。

必ずしも中国人のどの世代も日本離れを起こすわけではない。中国人の心をつかむには、まずはメイドインジャパンに愛着のある中高年向けから攻める、たとえば老人にも使いやすい製品のアプローチをするのも、これからの1つのやり方ではないだろうか。

リソース:東洋経済

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