2012年11月29日木曜日

中国ECビジネスに商機あり! 専門家が語る成功の秘訣

急成長を遂げている中国ECビジネス。2013年には「17兆円市場」にまで拡大し、日本を追い抜くといわれている。ダイヤモンド社はさる4月22日、中国進出支援サービスを展開するターゲットメディア株式会社と共同で『中国ECビジネス 本格進出のための実践セミナー』を開催。巨大な潜在性を有する中国EC市場に本格的な進出を検討する企業を対象に、各分野の専門家に中国現地のEC事業者やグローバル企業と伍して戦っていくための実践的な戦略・セオリーと最新事例を解説してもらった。

現地販売会社との効果的な業務提携が成功への近道
森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士 江口拓哉氏

中国のECビジネスには、(1)自社サイトを利用して自社製品をネット販売する「自社サイト型」(2)他社ECモールを利用して自社製品をネット販売する「他社サイト型」(3)自らECモールを開設して、他社のネット販売をサポートする「モール運営型」の3つがあります。それぞれに必要とされる許認可や参入障壁の高さは異なります。結論から言えば、参入難度が低いのは(2)(1)(3)の順です。外資系企業が(3)に参入するのは容易ではありません。

中国でのECビジネスを選択する際には、『ICP許可証』(付加価値電信業務経営許可証)が必要なビジネスモデルかどうかが重要なポイントとなります。この許可証は、中国の電信条例が規定する「インターネットを利用して収益を得る行為」に必要とされるものです。単に自社や自社製品の紹介(広告)のためにウェブサイトを運営するのであれば、ICP許可証はいりません。しかし、サイトを通じて直接製品を販売する場合は必要とされるケースがほとんど。とくにネット決済を行なっている場合は、間違いなく許可証が必要とみなされます。
 法律上は、内資(中国資本)50%以上の企業であればICP許可証が得られるはずなのですが、実際のところ、外国企業が出資する外国投資会社にICP許可証が下りるケースは、グーグルなど一部の例外を除いてほとんどありません。

「自社サイト型」の場合、法律上はICP許可証が必要になると考えられます。しかし上海市通信管理局など一部の地方管轄部門は、ICP許可証は不要との見解を示しています。サイトの利用によって収益を上げるオンラインゲームなどのコンテンツビジネスとは異なり、製品代金のみを受領しているから、という解釈によるものです。ただし、工商行政管理局(法務局に相当)が交付する営業許可証の経営範囲に「電子商務」(ECビジネス)が含まれていることが条件であり、外国投資会社がこの条件に当てはまることは非常に稀です。

「他社サイト型」は、『淘宝網』(タオバオ)など中国のECモールを通じて製品販売する形態なので、ICP許可証が不要と判断される余地はあります。また、自社サイト型と同じように経営範囲として「電子商務」が要求される場合が多く、やはり外国投資会社が直接参入することは容易ではありません。

そこで、「自社サイト型」や「他社サイト型」のビジネスを展開する場合、内資の販売会社等に製品を独占供給することによる業務提携がもっとも実現しやすいと言えます。ただし、効率的かつ安定的な業務提携を実現するためには、業務提携契約に工夫が必要であると思います。

中国のECコアユーザーは「都市部の大卒女性」
ターゲットメディア株式会社 取締役 齋藤勉氏
 
中国のネット人口は09年6月時点で3億3,800万人、EC人口は8,788万人に達しています。ネット人口に占めるECユーザーの割合は26%で、米国の約70%、日本の約50%に比べて成長余地が大きいと言えます。09年のEC市場規模は2,630億元(約3兆6,000億円)で2年前の約5倍になりました(以上、CNNIC『2009年中国ネットショッピング市場研究報告』より)。13年には1兆2,692億元(約17兆5000億円)となり、日本の市場規模を上回るものと予想されています。(iResearch社予想)
 
中国のECユーザー人口の約9割は都市部に集中しています。当面は都市部のユーザーをターゲットに据えるのが適切でしょう。収入では月収2,000~3,000元(約2万7,000~4万円)、年齢では18~30歳、学歴では大卒以上がECユーザーの多い層です。性別では女性ユーザーが61.5%と男性(38.5%)を大きく上回っています(以上、CNNIC『2009年中国ネットショッピング市場研究報告』より)。このコア層の属性に沿った商材を展開したほうが成功しやすいということです。
ECビジネスは「商品力」だけでなく、「販売手法」も含めた総合力が勝敗を決します。品ぞろえと価格は重要ですが、とくに価格については、すでに並行輸入品が中国国内で販売されている可能性があるので、『淘宝網』(タオバオ)などのECモールで価格動向を探っておくことが大切でしょう。
中国のECユーザーは、サイトのアクセススピードの速さ、配送時間の短さや配送サービスの質を重視する傾向があります。テストマーケティングとしてサーバを日本に置き、商品も日本から送る方法を選ぶと、ユーザー満足度が低くなる可能性があるわけです。商品認知を高めるためのプロモーションも必要ですし、電話対応などのアフターサービスも欠かせません。
これらを考えると、テストマーケティングの段階から、現地に一定の在庫を確保しておくことや、現地にサーバ環境を整え、プロモーションや電話対応などの支援もしてくれるECモールを活用することが有効ではないかと思います。

たとえば、中国最大のECモールを展開する『淘宝網』は、法人名義で出店できる『淘宝商城』というB to Cサイトを運営しています。小売りライセンスを保有する現地法人であること、現地で商標申請が受理された商品の販売権を保有していることが出店条件ですが、万が一コピー商品が出展された場合でも淘宝側が排除してくれるのが大きなメリットです。

ECモールへの出店を成功させるには、ユーザーからの信用度を高めることが大切。『淘宝商城』の場合、出店業者の信用度を評価するシステムがユーザーに公開されており、商品販売個数などの実績に応じて評価が上がる仕組みとなっています。初期段階では、販促商品を配ってでも販売個数を増やし、信用度を上げるといった工夫が大事です。

化粧品販売には申請から許可までに半年から9ヵ月
日本通運株式会社東京航空支店 国際貨物部
商品企画第一課 課長 米内山徹治氏

中国では、輸出入に関する法律や制度が頻繁に変わり、法解釈も税関ごとに異なります。とくに関税率は毎年1回見直されますので注意してください。

中国のオンラインショッピングで人気が高く、物流に関する当社への問い合わせが多いのはアパレル品、化粧品、工芸品です。この3品については日本側の輸出規制はとくにありません。ただし一部の皮製アパレル品、化粧品については、原材料や成分によってワシントン条約に抵触する可能性があります。

中国側の輸入関税は、アパレル品が14~19%、化粧品が6.5~10%、工芸品はさまざまですが、中国で人気の高い「南部鉄瓶」の場合で20%。このほか、いずれも17%の増値税(日本の消費税に相当)と、化粧品については30%の消費税(ぜいたく税に相当)がかかります。

アパレル品に対する中国側の輸入規制はほとんどなく、通関時間も半日程度と比較的スピーディです。工芸品も、口に触れたりする食器などは食品検疫検査を必要としますが、それ以外にさほど大きな規制はありません。

化粧品の場合、輸出前に中国の衛生部(厚労省に相当)から輸入化粧品衛生許可書を取得する必要があります。申請から許可までに半年から9ヵ月程度かかります。さらに、事前に届け出た中国語による成分表示等のラベル、CIQラベル(検査検疫機関が発行する輸入検査の合格証明)を製品に貼付しなければなりません。中国では衛生検査、商品検査、動植物検疫の3つを合わせて「三検」と呼び、これをクリアした製品にCIQが与えられます。

中国でECビジネスを行なう場合、注文のたびに日本から製品を直送する方法と、中国に在庫を置いて送る方法とがあります。前者の場合、郵便で中国の消費者に直接送るのには制限があり、現地に設立した子会社や代理業者を輸入元として一括送付するのが現実的です。ただし、商品の流れとお金の流れが一致しないと合法と見なされない可能性もありますので注意してください。中国に在庫がないと、クレームが発生するたびに日本から発送しなければならないという問題も生じます。一方で、日本側に在庫を置いておけば、棚卸しが容易で、中国側の制度変更の影響を受けにくいというメリットもあります。

中国に在庫を置けば、クレームにも迅速に対応できるため、信用力が高まります。ただし、最低でも月間1,000万円程度の売上がないと、現地に在庫を置くスケールメリットは得られないかもしれません。ビジネスの発展段階に応じて物流体制を見直すことが大切です。

中国人独特!検索キーワードは動詞が約30%
バイドゥ株式会社 国際事業室
マネージャー 高橋大介氏

『バイドゥ』(百度)など、中国の検索エンジンを使ってECビジネスを成功させるには、中国の検索方法の特徴を理解する必要があります。日本のネットユーザーは名詞を入力してサイトを検索することが多いのですが、中国では「買」(購入する)、「吃」(食べる)などの動詞が検索キーワードの約30%を占めます。「どこのレストランの北京ダックがおいしいですか?」といった文章を入力するのです。

また、日本では絞り込み検索のときに「渋谷(スペース)ファッション」とスペースを空けるのが一般的ですが、中国では、「日本(スペース)粉ミルク」ではなく「日本粉ミルク」といったように単語と単語をつなぐ傾向が強いようです。漢字がわからない場合は、日本語のカナに相当するピンイン(アルファベットの発音記号)入力することもあります。検索広告用のキーワードを選ぶ際の参考にしてください。

中国でECビジネスを展開するに当たっては、検索で上位に表示される同業他社の製品や販売手法などをベンチマークにして戦略を立てるのが有効だと思います。

たとえば中国で人気の高い日本の粉ミルクの場合、先ほどのキーワード使って『バイドゥ』で検索すると、「紅孩子商城」(レッド・ベイビー・ドットコム)という現地の粉ミルク販売サイトが上位に表示されます。この会社は『バイドゥ』の検索広告も含めて月350万円をネット広告に使っているようです。中国で粉ミルクをネット通販したいと考える場合は、この金額を目安に広告予算を検討してみるのも方法です。ちなみに日本の検索広告の単価は1クリック当たり50円前後ですが、中国はその3分の1程度。この会社の場合、月間17万5,000人程度を誘引しており、成約率は1~2%。粉ミルクの販売単価は3,000~3,500円なので、月間1,200万~1,300万円前後の売上を稼いでいるようです。

『バイドゥ』の現地スタッフによると、日本企業が中国で展開するECサイトは、(1)カテゴリ分けが不明確(2)商品画像や説明文がわかりにくい、という印象が強いようです。また、中国ではネット広告の商品内容について電話で問い合わせを受けるケースも多く、あらかじめ検索結果の表示に電話番号を入れておく企業もあります。そうした点を意識してサイト作りや広告作りをすれば、機会ロスが減らせるのではないかと思います。

検索エンジンが提供する各種調査ツールを活用して、キーワードのトレンドを探ることも販売機会を増やすうえで有効です。キーワードのアクセス件数は、時期や時間帯、クリスマスやバレンタインデーなどのイベントによって大きく上昇することがあります。その傾向を調査ツールで探れば、イベントに合わせてギフトプロモーションなどを仕掛けるのに役立ちます。

リソース:ダイヤモンド

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