2012年11月22日木曜日

外国人観光客の誘致 遅れを官民で取り戻せ


外国人の姿が広島市内や宮島で目に付く。海外からの観光客受け入れは一見、順調そうだ。ところが、中国地方全体でみると、それはとんだ思い違いである。

国土交通省は3年前から外国人宿泊者の統計を取り始めた。昨年のデータをみると中国地方の宿泊者は延べ27万人で全国の1・5%。温泉などを生かして誘致に積極的な九州の4分の1にすぎない。後進地と認めざるを得まい。

中国地方への宿泊者はアジアからと欧米からに二分される。世界不況のあおりで総数は前年から3割近く減ったが、一時的なものだろう。中国からの個人観光ビザの解禁が進み、アジアからの集客が大きく伸びる可能性がある。

中国5県は、本年度から官民が一体となって外国人観光客の呼び込みに本腰を入れる。遅まきながらだが、四国もにらんだ広域観光ルートづくりや情報発信、受け入れ態勢の整備を進めるという。

中国地方を訪れる外国人といっても、その6割余りは広島県に来ている。平和記念公園と宮島を訪れ、多くの人は1、2泊で離れる。さらにもう1、2泊してもらう手だてを考えられないか。

瀬戸内海という舞台がある。愛媛も含めた近隣県との広域観光ルートをつくり、周遊してもらうのが近道だろう。広島商工会議所などはこの秋、中国の大連から観光客を誘致し、広島・松山ツアーを企画している。県境を越えた連携のモデルになりそうだ。

国によって違う旅行客のニーズをつかみ、体験型のツアーを工夫する必要もある。台湾では今、空前のサイクリングブーム。しまなみ海道を自転車で渡るコースはうけるに違いない。農漁村に入り込んでみたい欧米人向けには、グリーンツーリズムが有望だろう。

外国人を引きつける魅力づくりも、要は地域の資源にどう磨きを掛け生かすかにかかっている。

広島県北広島町は2月初め、西日本をめぐる中国広東省の修学旅行生を誘致した。暖かい現地ではできない雪遊びと民宿への分宿を組み合わせて好評だった。スキー客の減少に悩む民宿のてこ入れ策を兼ねたアイデアである。

夜の見どころが少ないと言われる広島市だが、神楽という資源がある。中心部で定期的に夜間上演すれば、国内外の客から喝采(かっさい)を浴びるだろう。官民挙げて早急に取り組みたいテーマだ。

受け入れ態勢の整備も急がれる。中国人観光客は買い物の意欲が旺盛。広島市の商店街の約50店が中国最大手のデビットカードを使えるようにする予定だが、さらに増やす必要がある。外国人が街を歩きやすいよう観光案内所の拡充や地図、標識の改良も課題だ。

外国人を呼び込む広域観光の昨年度予算は5県で約2千万円。九州の5分の1である。情報発信などに思い切ったテコ入れを考えてもよいのではないか。

中国地方は、遅れているからこそ、伸びしろも大きいはずだ。攻めの取り組みで、雇用拡大などのプラス効果を引き出したい。

リソース:中國新聞

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