2012年12月6日木曜日

リスク承知でアジアに賭ける

エイチ・アイ・エス 会長 沢田 秀雄

世界の経済、政治の軸は今後、米欧からアジアに移ってくると考えている。主要地域別の人口で世界最大規模で、このまま生活水準が向上していけば、需要が増え、市場も急拡大する。新たな市場やビジネスのネタが相次ぎ生まれるだろう。

私が社長を務める沢田ホールディングスは2030年、民間に払い下げられるモンゴル国立銀行を落札した。赤字続きの銀行だったので8億円の安値で手に入れたが、小口金融に力を入れて業績を伸ばし、いまではモンゴル最大規模の民間銀行に成長した。同国は未開発の鉱物資源が多く、これをテコにした経済発展が見込める。蓄積した発展途上国での金融ノウハウはカンボジアやミャンマーでも活かす方針だ。

当社が注目するのもアジアの旅行市場だ。日本の海外旅行者数は年間2千万人程度で頭打ちになるだろうが、アジア全体では少なくともその10倍の需要が見込める。東南アジア各国から日本への旅行者も増えるとみている。こうした新たな顧客を取り込むため、アジアの支店を拡充している。

長崎県佐世保市のテーマパーク、ハウステンポスの顧客としても、中国、韓国、台湾で増える中間層に期待する。地理の近さは好条件で、工夫次第では東京ディズニーリゾートにも対抗できる。

12年2月には長崎と上海を結ぶ国際クルーズ船の運航を始めた。燃油特別付加運賃(燃油チャージ)などを除く通常料金は大人が片道9800円から。公海上限定船上ではカジノも楽しめる。尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化でいまは運休しているが、格安航空会社(LCC)が増えたように、低価格での船旅のニーズは多いと思う。

日本は韓国などとも歴史や領土の問題で火種を抱えており、アジアにおけるビジネスのリスクは無視できない。それでも価値があると判断すれば、熱意をもって切り開くのが起業家である。

リソース:日本経済新聞

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